誰も教えてくれない医療事務の実情【自費請求の説明】

医療現場では専門学校での授業や医療事務の勉強では学べない実務がたくさんあります。勤め先の病院やクリニックによっても異なりますが自費の施術をする場合、基本的には医師が患者に自費の旨を説明します。万が一そうでない医療機関の場合は事務員が患者に自費請求の説明をする必要があり、患者とのトラブルに繋がることも…。

そこで今回は、テキストなどには載っていなくても知っておいたほうがいい、医療機関における「自費請求の説明」について解説します。

目次

自費請求の説明は予め医師から患者に説明してもらうのが望ましい

冒頭にあったように、自費請求の検査をする際は先に医師から患者へ金額を含めた詳しい説明をすることが望ましいです。予め自費項目を実施することがわかっている場合は、事務員が先に患者に説明をするケースもあります。また、自費になる旨は医師から伝え、詳しい料金の説明は事務員が対応する医療機関もあります。

検査を終えた後の会計時に患者にいきなり自費が発生する旨を説明すると、必ずと言っていいほど患者とのトラブルに発展しますので、基本的に診療に関することは医師が予め患者に説明するという形にしておくことが重要です。

ほとんどの医療機関ではきちんと医師が自費項目を実施する旨を患者に説明していると思いますが、医師が患者に自費項目の説明をしない医療機関がある場合は料金表を掲示するなどした上で、改めて“自費になる説明は医師からする”としっかり決めておくことが大切です。

また、診断書料金やオムツ代など検査以外の諸費用に関しては最初から事務員が患者に説明することも多いので覚えておきましょう。

ハルコさん

サトル先生は自費項目が発生する旨をしっかり患者さんに説明してくれるので安心です!

サトル先生

保険で賄えると思って診察に来る患者さんがほとんどだから、自費項目を実施する際は患者さんに予め説明するのは当たり前だよね。

もしそうでない医療機関があるとしたら、医療機関内でその方針を見直した方がいいと思うなぁ。

自費請求の説明で患者とのトラブルを防ぐには

一歩間違えるとトラブルになりがちな自費請求の説明ですが、医師から患者へ自費項目の必要性と金額をきちんと説明し、会計時に再度事務員が確認として丁寧に説明した上で会計を行えば何の問題も起こらないでしょう。

自費請求の説明で患者とのトラブルを防ぐために最も重要なのは、事前にきちんと正しい情報を医師から患者へ説明するという体制を院内で構築することです。その体制を整えていくことが医療事務の重要な役割のひとつであるといえます。

他にも、自費請求でのトラブルを回避するために医療事務としてできることとしては…

・料金表を作成して掲示する

医師も事務員も患者も料金を確認することができるので説明するときにも役立ちます。

・自費検査内容に関してもっと学ぶ

何事も事前に学んでおくことは大切です。自費項目に関して学んでおくと、さらに仕事がスムーズになるでしょう。

などがあります。患者とのトラブルを防ぐためのベストな形は医療機関によって異なるので、院内でしっかりと意識を共有し合い、円滑に業務が遂行できるように工夫するとよいでしょう。

自費請求の例

自費請求になる項目は多数あるので、ここでいくつかご紹介します。実施している自費請求項目は病院やクリニックごとに異なるので、各自で把握しておくとよいでしょう。

【自費診療の例】

  • 血液型検査
  • HIV検査
  • B型肝炎検査
  • C型肝炎検査
  • 梅毒検査
  • ピロリ菌抗体検査
  • 麻疹検査
  • 風疹検査
  • 便培養(O157・赤痢・サルモネラ・チフス)検査
  • アレルギー検査
  • HPV(ヒトパピローマウィルス)検査
  • 子宮頸部細胞診
  • 子宮体部細胞診
  • インフルエンザ予防接種
  • 肺炎球菌ワクチン接種
  • 帯状疱疹ワクチン接種
  • 各種健康診断 など
※疾病がある場合を除く※各種ワクチンは症状がなく自身にて検査を希望する場合
※各種ワクチンは症状がなく自身にて検査を希望する場合
※金額は各医療機関で設定されているので患者が知りたい場合は要問合せ

そのほかの自費請求

前述の検査のほか、療養の給付(保険給付として行うもの)と直接関係ないサービス等においては自費徴収できるものとできないものがあるので、こちらも把握しておくとよいでしょう。覚えられない場合はマニュアル化して手元に置いておくなど工夫し、いつでも患者に説明できるように準備しておくと、いざという時にも便利です。

■自費徴収できるもの

①日常生活上のサービスにかかる費用

・おむつ代、尿とりパット代、腹帯代、T 字帯代

・病衣貸与代(手術、検査等を行う場合の病衣貸与を除く。)

・テレビ代、ゲーム機、パソコン(インターネットの利用等)の貸出し、など

・理髪代、クリーニング代、など

②公的保険給付とは関係のない文書の発行に係る費用

・証明書代(職場復帰等に関する意見書、生命保険等に必要な診断書、 など

・診療録の開示手数料(閲覧、写しの交付等に係る手数料)

・外国人患者が自国の保険請求等に必要な診断書等の翻訳料、など

③診療報酬点数表上実費徴収が可能なものとして明記されている費用

・在宅医療に係る交通費

・薬剤の容器代(ただし、原則として保険医療機関等から患者へ貸与するものとする。) など

④医療行為ではあるが治療中の疾病又は負傷に対するものではないものに係る費用

・インフルエンザ等の予防接種、感染症の予防に適応を持つ医薬品の投与

・美容形成(しみとり等)

・禁煙補助剤の処方(ニコチン依存症管理料の算定対象となるニコチン依存症(以下「ニコチン依存症」という。)以外の疾病について保険診療により治療中の患者に対し、スクリーニングテストを実施し、ニコチン依存症と診断されなかった場合であって、禁煙補助剤を処方する場合に限る。)

・治療中の疾病又は負傷に対する医療行為とは別に実施する検診(治療の実施上必要と判断し検査等を行う場合を除く。)

⑤​​その他

・保険薬局における患家等への調剤した医薬品の持参料及び郵送代

・保険医療機関における患家等への処方箋及び薬剤の郵送代

・日本語を理解できない患者に対する通訳料

・他院より借りたフィルムの返却時の郵送代

・院内併設プールで行うマタニティースイミングに係る費用

・患者都合による検査のキャンセルに伴い使用することのできなくなった当該検査に使用する薬剤等の費用(現に生じた物品等に係る損害の範囲内に限る。なお、検査の予約等に当たり、患者都合によるキャンセルの場合には費用徴収がある旨を事前に説明し、同意を得ること。)

・ 院内託児所・託児サービス等の利用料

・手術後のがん患者等に対する美容・整容の実施・講習など

・有床義歯等の名入れ(刻印・プレートの挿入等)

・公的な手続き等の代行に係る費用 など

■自費徴収できないもの

①手技料等に包括されている材料やサービスに係る費用

(ア) 入院環境等に係るもの

(例)シーツ代、冷暖房代、電気代(ヘッドホンステレオ等を使用した際の充電に係るもの等)、清拭用タオル代、おむつの処理費用、

電気アンカ・電気毛布の使用料、在宅療養者の電話診療、医療相談、血液検査など検査結果の印刷費用代 等

(イ) 材料に係るもの

(例)衛生材料代(ガーゼ代、絆創膏代等)、おむつ交換や吸引などの処置時に使用する手袋代、

手術に通常使用する材料代(縫合糸代等)、ウロバッグ代

皮膚過敏症に対するカブレ防止テープの提供、骨折や捻挫などの際に使用するサポーターや三角巾、

医療機関が提供する在宅医療で使用する衛生材料等、医師の指示によるスポイト代、

散剤のカプセル充填のカプセル代、一包化した場合の分包紙代及びユニパック代 等

(ウ) サービスに係るもの

(例)手術前の剃毛代、

医療法等において設置が義務付けられている相談窓口での相談、

車椅子用座布団等の消毒洗浄費用、インターネット等より取得した診療情報の提供、

食事時のとろみ剤やフレーバーの費用 等

②診療報酬の算定上、回数制限のある検査等を規定回数以上に行った場合の費用(費用を徴収できるものとして、別に厚生労働大臣の定めるものを除く。)※

③新薬、新医療機器、先進医療等に係る費用(別途規定あり)※

(ア) 薬事法上の承認前の医薬品・医療機器(治験に係るものを除く。)

(イ) 適応外使用の医薬品(評価療養を除く。)

(ウ) 保険適用となっていない治療方法(先進医療を除く。) 等

※②③に関しては別途規定があり、保険診療を行いながら請求できる範囲が定められている。(選定療養、評価療養)

自費請求の説明は業務の一環!

自費請求の項目は数多くありますが、病院やクリニックによって、よく実施される検査は限られてくるので把握しておくとよいでしょう。また、症状と検査の関連性も併せて知っておくと自費が発生する旨を予め患者に伝えることができます。

自費診療の項目自体は多いので慣れるまでは大変かもしれませんが、あくまでも“自費請求の患者への説明は医療事務の業務である”ということを念頭に置いておくと、この業務に責任感を持つことができるでしょう。

参考文献・参考資料