オンライン資格確認で事務コスト軽減! 概要や導入準備について

令和5年4月現時点、医療機関側が患者の加入している医療保険や自己負担減額などの資格情報を確認するための施策として導入されている「オンライン資格確認」(※)。

※通称「マイナ保険証」。勤務先からの保険証発行がなくなり、保険証が欲しい従業員のみ発行に。保険証ではなくマイナンバーカードで受診することになります。

同年4月からは原則として義務付けられますが、まだまだ定着していません。医療機関に勤めるスタッフのなかにも実はいまいち詳細を理解できていないという方が多いのでは?さらに日頃の業務に追われ、取り急ぎ経過措置の猶予届出を提出している…なんて医療機関も少なくないでしょう。

この記事ではそんな方たちの役に立つべく、オンライン資格確認の概要やメリット、申請手順や期限、経過措置や補助金制度など詳細にいたるまで、導入準備の情報をまとめて簡単に説明していきます。

オンライン資格確認とは

まずおさらいのために簡単なオンライン資格確認の概要を説明いたします。病院・クリニックなどの医療機関や薬局では患者が加入している医療保険を確認する必要があり、この作業のことを「資格確認」と呼ぶことは皆さんも理解しているかと思います。

従来の資格確認の方法は患者から健康保険証を受け取り、記号・番号・⽒名・⽣年⽉⽇・住所などを医療機関システムに入力するというものですが、この方法では入力に手間がかかったり、ミスが発生しやすかったりなどの難点がありました。

また資格を失効した保険証を患者が提示した場合、医療機関や薬局が保険証の発行元(保険者)に医療費の一部を請求しても医療機関への支払いが行われない、保険者が「元被保険者」である患者の医療費を負担するなどといった問題が起こることも…。こうした背景があり、2021年10月に運用開始されたのがオンライン資格確認なのです。

はるこさん

これまでの資格確認は、医療事務スタッフが細かい情報を一つひとつシステムに入力する必要があったんですね。

入力ミスやチェック時の見落としがありそうで怖いです…。

さなみさん

ハルコちゃんの言う通り、これまでの方法だと手間も時間もかかるし、何よりミスが発生しやすくて、その処理でさらに仕事が増えてしまうことも多かったの。

システム上、どうしても資格情報の更新が遅くなってしまうから、すでに使用できないはずの保険証で来院されてた…なんてことが後々わかることも少なくなかったり。

はるこさん

でも、オンライン資格確認ならそういったトラブルもだいぶ軽減されるんですよね?

さなみさん

そうね。オンライン資格確認はマイナンバーカードを利用して患者さんの情報を集約して管理してくれるシステムなの。

受付時にマイナンバーカードから患者さんの最新の資格情報を取り込んでくれるから、これまでみたいな入力ミスもなくなるし、保険証の資格情報による医療費負担のトラブルなんかも起こりにくくなるのよ。

それだけじゃなくて、オンライン資格確認は医療の発展に有益な情報も集めてくれるから、将来的に“より質の良い医療を提供しやすくなる”ともいわれているのよ。

オンライン資格確認のメリット

前述の通り、義務化(※)に差し掛かった今現在においてもまだまだ定着しきっていないオンライン資格確認ですが、オンライン資格確認を導入するメリットは複数あり、代表的なものとしては以下の3点が考えられます。

※医療機関の準備遅延を考慮し、令和4年度末時点で止む終えない事情がある医療機関、薬局は、期限付きの経過措置が設けられました。詳細は以下サイトにてご確認ください。
https://www.iryohokenjyoho-portalsite.jp/post-21.html#keikasoti

  • 受付業務の手間削減
  • 資格過誤によるレセプト返戻の作業削減・未収金の軽減
  • 患者の医療情報の入手による正確な医療の提供

保険証の場合は最低限の⼊⼒作業が必要になりますが、マイナンバーカードを用いて受付を行うことで同じように資格情報を取り込むことができるため入力の手間が省けます。

またオンライン資格確認を導入すると患者の最新の保険資格がその場で確認できるようになるため、資格過誤によるレセプト返戻が減り、窓口業務の負担や未収金が軽減されます。オンライン資格確認導入後は一括照会が可能になり、患者が来院(来局)する前に予約している患者の保険資格が有効か、保険情報が変わっていないかを把握できるようにもなります。

さらに通常、薬剤情報や特定健診情報の閲覧にはマイナンバーカードによる本人確認と同意が必要になりますが、災害時は特別措置として本人確認ができなくても閲覧ができるようになります。

【受診する側のメリット】

患者側のメリットとしては、オンライン資格確認を利用したほうが自己負担が安くなるということが大きいでしょう。

令和5年4月〜12月にかけて、“初診時の加算を見直し、再診時について新たに評価する”というオンライン資格確認の導入・普及に関する加算の特例措置がはじまります。変更点や新しく設けられた点を簡単にまとめると、以下の通りになります。

《2023年4月から変更》

▼医療情報・システム基盤整備体制充実加算1

マイナ保険証を利用しない患者は月1回に限り6点を算定(初診料へ加算)

▼医療情報・システム基盤整備体制充実加算2

マイナ保険証を利用する患者は月1回に限り2点を算定(初診料へ加算)

《2023年4月から新設》

▼医療情報・システム基盤整備体制充実加算3

マイナ保険証を利用しない患者は月1回に限り2点を算定(再診料・外来診療料へ加算)

※マイナ保険証を利用する患者または他の保険医療機関から診療情報の提供を受けた場合は、医療情報・システム基盤整備体制充実加算3(2点)の算定はできません。

オンライン資格確認の導入準備

オンライン資格確認の内容についておおよそ説明できたところで、導入準備の流れについて説明していきます。一見するとむずかしそうに感じますが、ほぼ医療機関等向けポータルサイトを活用する作業になるため作業は至ってシンプルです。

またこちらのサイトでは導入準備のほか、オンライン資格確認に関する解説動画なども掲載されているため、より理解を深めるためにも役立ってくれます。

【おおよその作業の流れ】

①顔認証付きカードリーダーの選定/申し込み

▶ポータルサイトで申請

https://www.iryohokenjyoho-portalsite.jp/

②システムベンダへ発注

1)見積もり依頼

 《見積もり依頼項目》

 ー各種機器の導入・設定

 ーシステムの改修・動作確認

 ーネットワークの設定・疎通確認

2)発注

▶システムベンダに発注

③導入準備

1)オンライン資格確認利用申請

▶ポータルサイトで申請

2)機器受け取り・設定

▶システムベンダにて設定

3)運用テスト

▶システムベンダにてテスト

4)運用開始日の入力

▶ポータルサイトで登録

④運用準備

1)受付業務などの変更点の確認

▶各医療機関・薬局で対応

2)患者向け掲示の準備(個人情報保護の利用目的の例示など)

▶各医療機関・薬局で対応

ーー 導入完了・運用開始 ーー

⑤補助金申請

1)必要書類の受領/準備(納品書など)

▶システムベンダから受領

2)補助金申請

▶ポータルサイトで申請


顔認証付きカードリーダーは、医療機関及び薬局に無償提供されます(病院3台まで、診療所等1台)。それ以外の改修などにかかる費用については、補助金の申請が可能です。

ただし補助金を受け取るには、令和4年6月7日から令和4年12月末までに顔認証付きカードリーダーを申し込むとともに、令和5年2月末までにシステム事業者との契約を結ぶ必要があります。また、令和5年6月までの交付申請が必要とされているため、これからの導入を検討されている医療機関・薬局においては該当しません。

オンライン資格確認の経過措置

オンライン資格確認の導入の原則義務化についてですが、令和4年度末時点で以下のような“やむを得ない事情”がある保険医療機関や薬局については、期限付きの経過措置が設けられています。

やむを得ない事情期限
(1)令和5年2月末までにベンダーと契約締結したが、導入に必要なシステム整備が未完了の保険医療機関、薬局(システム整備中)システム整備が完了する日まで(遅くとも令和5年9月末まで)※医療情報化支援基金による補助の拡充装置は、令和5年9月末事業完了まで継続
(2)オン資に接続可能な光回線のネットワーク環境が整備されていない保険医療機関、薬局(ネットワーク環境事情)オン資に接続可能な光回線のネットワークが整備されてから6か月後まで※医療情報化支援基金による補助の拡充装置は、令和6年3月末事業完了まで継続
(3)訪問診療のみを提供する保険医療機関訪問診療のオン資(居宅同意取得型)の運用開始(令和6年4月目途)まで※訪問診療等におけるオン資の導入に係る財政支援は、令和6年3月補助交付まで実施
(4)改築工事中、臨時施設の保険医療機関、薬局改築工事が完了するまで臨時施設が終了するまで※令和5年2月末までに契約し、令和5年9月末までに事業完了の場合には、医療情報化支援基金による補助の拡充装置の対象
(5)廃止・休止に関する計画を定めている保険医療機関、薬局廃止・休止まで(遅くとも令和6年秋まで)※令和5年2月末までに契約し、令和5年9月末までに事業完了の場合には、医療情報化支援基金による補助の拡充装置の対象
(6)その他特に困難な事情がある保険医療機関、薬局・自然災害等により継続的に導入が困難となる場合・高齢の医師等でレセプト取扱件数が少ない場合(目安として、令和5年4月時点で常勤の医師等が高齢であって、月平均レセプト件数が50件以下である)・その他例外措置又は(1)~(5)の類型と同視できる特に困難な事情がある場合特に困難な事情が解消されるまで※令和5年2月末までに契約し、令和5年9月末までに事業完了の場合には、医療情報化支援基金による補助の拡充装置の対象

経過措置の対象となる保険医療機関や薬局は、あらかじめ社会保険診療報酬支払基金(原則、医療機関等向けポータルサイト)を経由して、地方厚生(支)局に猶予届出を提出する必要があります。(※)

※経過措置の詳細や届出方法については、以下サイトをご確認ください。
https://www.iryohokenjyoho-portalsite.jp/post-21.html

まとめ

ここまで概要やメリット、導入準備、経過措置など、オンライン資格確認の内容について要点をかいつまんで説明してきました。いまいち理解しきれていなかったという方も、オンライン資格確認の内容を簡単に復習できれば幸いです。

オンライン資格確認は医療機関側だけでなく、患者側もスムーズな医療サービスを受ける上でメリットの多い制度です。この制度が浸透すれば保険証の確認頻度も減り、同時に期限切れの保険証による受診で発生する過誤請求や手入力による手間などの事務コストもかなり削減されるはずなので、これまで起こっていた保険証忘れによるさまざまな問題が解消される日もそう遠くないのではないでしょうか。

どうしても導入準備にひと手間かかってしまうのがネックではありますが、今後の業務効率の向上などに向けてぜひ早いうちに導入を進めておきたいところです。

医療事務おすすめ書籍リスト
参考文献・参考資料