医療事務のみなさん、主治医意見書を知っていますか?

サナミ先輩

先生!先日お願いした主治医意見書、今週中に提出なんですけど大丈夫ですか?

サトル先生

あ、ごめんごめん。すっかり忘れてた!

リマインドありがとう。間に合うようにすぐ作成するよ。

サナミ先輩

も〜〜〜お願いしますよ!!

介護保険制度の要介護認定を受ける際に必要となる書類「主治医意見書」というものがあることをご存知ですか? この主治医意見書は主に役所から医療機関へ直接送られてくるものなので、医療スタッフは知っておかなければならない重要な書類の一つです。しかしまだ実際に扱ったことがない方もおられるでしょう。急に手元に届いた際に困ってしまわないように、主治医意見書について知っておきましょう。

主治医意見書とは

前述のとおり、主治医意見書は介護保険による要介護認定を受ける際に必要なものです。介護保険被保険者の要介護認定を決める際、判断材料として調査員による認定調査結果が必要であるため、かかりつけ医療機関の主治医が作成する医学的な意見書が必要になります。この医学的な意見書が「主治医意見書」です。

この主治医意見書は介護認定(要介護・要支援認定)の審査を行う際にどのレベルの介護が必要になるかを確認・判断する重要な書類になります。そのため、既往歴・精神状態・生活機能低下の直接の原因となっている傷病名と治療内容だけでなく筋力の状態・認知症の有無・日常生活の自立度など、申請者の心身の状態と生活の状況が細かく記載されています。
患者が介護保険制度の要介護認定を受けるために必要である主治医意見書には提出期限があるため医療事務は注意しなくてはなりません

主治医意見書は誰が持ってくるの?

主治医意見書は①誰も持ってこないケース②申請者がかかりつけ医師に依頼するケースがあります。

①誰も持ってこないケース

区市町村から主治医のいる医療機関へ書類作成を依頼するという形。この場合、何の前触れもなく役所から送られてくることがほとんどです。

②申請者がかかりつけ医師に依頼するケース

申請者(患者)がかかりつけの医師に直接依頼する場合は必ず自治体などが配布した用紙を利用しなくてはならないため、申請者が予め用意しなくてはなりません。また医師側は当日に急には作成できないため、申請者は前もって医師に主治医意見書の作成依頼を打診しておく必要があります。

また、申請者は主治医意見書作成用の「問診票」を記入し、主治医に渡すことでさらにスムーズに作成できることがあります。問診票は医療機関によって異なるため、確認が必要です。

<参考>介護保険「主治医意見書作成用」問診票

http://www.kanagawa.med.or.jp/yamato/hospital/youshiki_kaigo.html

作成した主治医意見書は医療機関側から申請者に内容を開示することはありませんが、申請者または家族による開示請求が可能です。ただし、開示請求による内容確認には各区市町村の介護保険窓口での手続きが必要です。

主治医依頼書が届いたら

主治医意見書は基本的には医師が作成するものなので、届いたら医師に作成を依頼することになりますが、まずは提出期限を確認し医療事務の方でも把握しておくことが重要です。

また医師が主治医意見書をどのように作成するのかを知っておくと作成時に医師をサポートしやすくなるため、おおよその流れを知っておくとよいでしょう。特に新規作成の場合には医療事務員が必要な患者の情報を事前に用意しておくことが多いので、主治医意見書の内容を確認しておくことをお勧めいたします。

①新規作成の場合

カルテ、介護記録、訪問看護ステーションなどからの記録を参照し、主治医意見書に記載する。

②更新の場合

前回作成したものを参考にし、相違点のみ修正する。

③参照するものが何もない場合

バーセルインデックス(BI)(※1)、バイタリティーインデックス(VI)(※2)などを家族から聞き取って参考にするなどして作成する。

※1)バーセルインデックス(BI)・・・要介護者や病気・障がいを持つ方の、日常生活動作を評価するための尺度の1つ
※2)バイタリティーインデックス(VI)・・・虚弱高齢者を対象とする、起床、意思疎通、食事、排泄、リハビリテーションの5項目の日常生活動作に関する「意欲」についての客観的機能評価法

<参考>
「主治医意見書」様式(埼玉県)

https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/19894/210401shujiiikensho.pdf

「主治医意見書」書き方の見本(神奈川)

http://www.kanagawa.med.or.jp/yamato/hospital/youshiki_kaigo.htm

これだけは知っておきたい主治医意見書記入のポイント

https://www.tokyo.med.or.jp/docs/handbook/392-406.pdf


最近の医療現場では主治医意見書に直接記入するのではなく、あらかじめPC内に用意してあるテンプレートを使用し、PC上で記入することが多いです。様式は区市町村のHPよりダウンロードできるので、勤め先のPC内に準備してあるかを確認しておきましょう。

実際にある主治医意見書トラブル

こまで読んでいて「主治医意見書は医師に委ねれば良いのなら簡単!」と思った方も少なくないでしょう。しかし、そう甘くはないのが医療現場の現実です。ここからは実際に起こり得る主治医意見書に関するトラブルをご紹介します。

医師(主治医)が主治医意見書を書いてくれない

残念ながら主治医意見書を作成すること自体を面倒くさがる医師がいるのが現実です。そのようなことがあっても期限に遅れないよう早めに作成を依頼すること、作成してもらえるまで何度もめげずにお願いすることなどを心掛けましょう。作成を面倒くさがる医師に対しては、医師の手間を省くための“作成をサポートする体制”を見せておくこと(該当のカルテや看護記録を用意しておくなど)で少しは協力的になってくれるかもしれません。

サナミ先輩

定期受診している場合は定期受診の際にかかりつけの医師(主治医)に主治医意見書の作成をお願いすると、通常の定期受診の一貫として快く対応してくれることが多いのよ。

定期受診=主治医だから断ることも出来ないしね!

ハルコ

そうなんですね!覚えておきます!

うちのサトル先生のように、いつでも快く対応してくれるのは有難いことなんですねぇ。

作成方法がわからず期限を過ぎてしまった

この場合は完全に医療事務側のミスとなります。主治医意見書のように期限がある物に関しては、やり方がわからない場合でも後回しにはできません。しつこいようですが、主治医意見書には提出期限があるということを覚えておきましょう。

医師に依頼していたが期限が過ぎてしまった(医師が期日を守ってくれなかった)

医師に提出期限を伝えていたのにも関わらず期日までに作成してくれなかった、ということもよくあります。このような医師がいる場合でも、医療事務側が気にかけておくことでミスを防ぐことができます。医師に主治医意見書の作成をお願いしたら、必ず提出期限が来る前に長めの余裕を持ってリマインドしておきましょう。

もし初診の患者が主治医意見書の作成を依頼してきたら?

初診の患者が主治医意見書の作成を依頼してきた場合、患者の状態を把握するために血液検査・レントゲン・心電図など全身状態をチェックするための検査をする必要があります。

また、医療事務にも意外と知られていないのが

  • 初診の検査費用は区市町村の事務費にて請求可能
  • 治療となった場合は保険算定が可能(事務費では請求せず、すぐに保険請求ができる)

ということです。

さらに、初診の患者に関しては「私は(この初診患者の)主治医ではない」と言う医師が多いのが現実で、主治医ではないことを理由に主治医意見書の作成を断るケースもしばしば見受けられます。このような場合でも区市町村の担当者から医療機関へ直接電話が入り、主治医意見書の作成をお願いされることがあります。その際に医師と役所の板挟みになるのが医療事務です。医師がスムーズに作成してくれない場合は対応に手間と時間を要し、期日が大幅に遅れる可能性があることを覚えておきましょう。

主治医意見書の作成料は?

もう一つ、主治医意見書に関して覚えておきたいことがあります。それは主治医意見書の作成料についてです。主治医意見書の作成料は厚生労働省が一定の基準額を設定しているため、ほぼ決まっています。

在宅施設入所
新規申請者5,000円4,000円
継続(更新)申請者4,000円3,000円

※消費税が課税され、これも施行事務費補助金の補助対象となる

これは、制度上は要介護認定にかかる費用として各区市町村が独自に設定することになっていても参考となる基準額がなく、ほとんどの区市町村が基準額に準じて作成料を設定しているという現状があるためです。

ここがポイント

主治医意見書の作成料は要介護認定にかかる事務費として区市町村(保険者)が負担するため、医療機関は各都道府県の担当者へ連絡し、請求の方法を予め聞いておくことをお勧めします!

請求した主治医意見書の作成料は、区市町村から要介護認定にかかわる費用として介護給付費と同時に審査支払機関の中で処理され、国保連合会を通じて請求を受付けた月の翌月末までに医療機関等に支払われます。そして医療機関等には月末頃に「介護給付費等支払決定額通知書」が送付されます。

医療事務は主治医意見書の作成を医師に依頼するだけで終わりではありません。きちんと作成料が入金され、通知書が届くまでしっかりと管理しましょう。

書類の管理でミスを防ぎましょう

主治医意見書に関しては各区市町村のHPに必ず載っているので、予め確認しておきましょう。主治医意見書において最も大切なのは提出期限までに医師にきちんと書いてもらうことですが、同じくらい大切なことは院内でそれらがきちんと管理されているかということです。

主治医意見書に関わらず、書物はすべて到着日、期日、送り主、書類の種類などをきちんと把握しておくことが重要です。各医療機関内で共有のエクセルなどを利用し、きちんと書物の管理をしておくとミスの予防に繋がります。主治医意見書の場合は、こちらから郵送したり担当者とやり取りをしたりすることがあるので、区市町村へ郵送した日付、振込日、担当者なども併せて記載しておきましょう。