電子カルテのメリット・デメリット!知っておくべき留意点とは

患者情報の管理や共有のしやすさなどの追求のため1990年代に誕生した「電子カルテ」。
現在では主に400床以上の一般病棟のほとんど、
また200床未満の一般病院や一般診療所などでも半数近くで利用されています。
今回はそんな電子カルテを導入するメリットやデメリット
そのほか移行するにあたって知っておくべき情報について詳しくまとめてみました。

電子カルテとは

電子カルテとは、診療経過やバイタルに検査結果や画像・看護記録・紹介状など患者に
付随する情報を加えて、電子データとして保存したものです。
もしくは紙カルテを電子化してデータベースで管理するシステムを指す場合もあります。

電子カルテは大きく分けて、以下2種類があります。

・病院向け電子カルテ
・診療所(クリニック)向け電子カルテ

入院機能や部門機能、医事会計システム(レセコン)を有しているかなどが異なるため、
移行に伴い導入製品を比較検討する際には注意が必要です。

電子カルテのメリット

電子カルテには、大きく分けて5つのメリットがあります。
どのような内容なのかさっそく確認していきましょう。

メリット①:業務効率の向上

電子カルテの導入によりさまざまな業務の効率化を図ることができます。

▼予約・受付・会計業務
紙カルテに比べて検索性が高いため、カルテ出しに時間を要しません。
また、日医標準レセプトソフトと連携した電子カルテもあるため、
算定漏れなどのミスを防止でき、会計業務がスムーズになります。

▼カルテ入力・文書作成
定型文の登録機能や過去カルテのコピー(Do入力)機能、
文書作成やカルテ入力を支援するテンプレート機能などにより、
医師のカルテ入力や文書作成などにかかる時間を軽減できます。
そのほか手書き入力やタッチ操作機能を備えた電子カルテであれば、
PCが苦手な医師でも操作しやすいでしょう。

メリット②:検査結果の取り込みができる

電子カルテでは検査会社に依頼した検査の結果データも連携して取り込むことができるので、
紙カルテのように検査結果が届いてから紙カルテを探し記入…
といった面倒な過程を踏む必要がありません。

必要な時に電子カルテの画面上から検査結果の確認ができるようになるため
医師はもちろん、看護師や検査技師、医療事務など複数の関係者が使いやすく、
それぞれよりスムーズな作業が可能になります。

メリット③:保管スペースの削減

電子カルテのデータはサーバーと呼ばれる装置に蓄積されます。
そのため紙カルテのように膨大な保管場所を必要としません。
また紙カルテを原本として電子化保存するサービスもあるので、
電子カルテ導入の際にはあわせて確認しておくとよいでしょう。

必要な紙カルテだけ残し、
そのほかを電子化することができれば大幅に保管スペースを減らすことができます。

メリット④:リアルタイムで情報確認・共有が可能

電子カルテは入力や編集、削除した情報がすぐに反映されるため、
必要になった際に必要な情報をリアルタイムで確認できます。

紙カルテのように部門間での受け渡しが必要なく、
所在がわからなくなることもないので簡単に情報を共有できるでしょう。
紛失の心配もありません。

ただし、場合によっては紙を用いた方が便利なこともあるため、
受付票などの紙類が運用として残ることもあります。

メリット⑤:人為的なミスを防ぐ

紙カルテの場合は医師が患者の話を聞きながら内容を記入するため、
走り書きになり文字が読みにくくなるケースも少なくありません。
しかし、電子カルテであれば文体や文字の形も統一されており、
看護師や事務員が医師の指示を正確に把握できるようになります。

したがって必然的に指示内容の受け取りミスを未然に防ぐことが可能になったり、
会計やレセプトの操作やチェックなどをスムーズに行えるようになったりと
人為的なミスの予防に有効です。

電子カルテのデメリット

さまざまなメリットを有する電子カルテですが、当然懸念すべき点も存在します。
導入を考慮しているのであれば、メリットだけでなくデメリットも判断材料にすべきでしょう。

1)導入コストがかさむ

高性能で大変便利な電子カルテですが、その分導入や運用にはコストがかかります。
月々のランニングコストはもちろん、必要な機能によってはカスタマイズ費用も必要になるでしょう。
しかし、提供形態やメーカーによっても価格は大きく異なるうえ、
補助金を利用できる場合があったり、今では無料の電子カルテも世の中に出てくるなど、
よりシェア争いが活性化しています。

デメリットと金銭的なコストの問題を払拭できる利便性を持った電子カルテを選ぶためにも、
複数企業の製品を比較検討することが大切です。

2)安定したシステム運用に時間を要する

電子カルテの最大の難点は習得に時間がかかる点です。
電子カルテと医事会計システムが別の場合はどちらの操作も習得する必要がありますし、
自院の診察・診療体制に対応できるように設定を最適化する必要があったり、
反対にこれまでの運用を変更・統一しなければならないケースも出てきます。
運用が安定してしまえば便利にはなりますが、そのための準備が負担になりやすいでしょう。

さらに人によってコンピュータ操作の技量が違うため、
すべての医師・スタッフが使いこなすには時間を要します。
業務をスムーズに進行させるためにテンプレートを利用してカルテの記載内容を統一する、
これまで利用していた帳票が使えなくなることを考慮して
代替手段などの確認・情報共有を行うなどレギュレーションを見直す必要があります。

また医師や看護師、事務員など電子カルテの使用者全員に勉強会や研修など、
前もってシステム操作が習得できる場を設けることも、より効果的な運用につながります。
設定に負担を感じる場合は、サポートサービスを実施しているベンダーを選ぶこともおすすめです。

3)停電時に利用できない

電子機器である以上、災害発生時など停電時には電子カルテの利用はできません。
自家発電装置を備える病院もありますが、断線や接続不良などシステムダウンする危険性もあるので提供会社には、災害時などの備えや対応方法を事前に確認しておく必要があります。

不測の事態に備え、日頃から一時的に紙カルテ運用に切り替える訓練なども行っておくとよいでしょう。

4)セキュリティの対策が必要

ウイルス対策を行うことはもちろん、内部不正にも注意しなければなりません。
カルテをデータ化した場合、USBメモリなどを用いれば簡単に大量のデータを外部に持ち出せます。
ログの管理やアクセス制限などのセキュリティを厳重に管理しておく必要があります。

また提供会社がどのようなセキュリティ対策を実施しているかも注意しておくとよいでしょう。

サナミ先輩

電子カルテのメリットとデメリットを見てみて、どうだった?

ハルコ

うーん…

メリットを見ていた時は導入する以外の選択なんてない!と思ったんですけど、デメリットを見てみると簡単に導入を決めるのはむずかしそうだなって…。

サナミ先輩

そうね、たしかに電子カルテが医療機関の情報管理において有用なことは間違いないわ。でも、それだけ性能の良い機器を使うにはそれだけのコストもかかるし、リスクもあるわ。

良い面だけじゃなくて、悪い面も踏まえて自分たちの医療機関に必要なのかどうかをしっかり確認しないとね。

ハルコ

本当にそうですね!

大きな病院みたいに膨大な量の情報を管理する場合は当然電子カルテの方が便利でしょうし、小さい診療所ならわざわざ導入する方が大変かもしれないし…。

サナミ先輩

そう。導入だけじゃなくその後に運用していくためにはそれなりに人員も必要だからね。当然、病院の規模によっても必要性の高さが変わってくるわ。

金銭的な負担は大丈夫そうか、使用法の習得のために人員を避けるか、そもそもそれだけの負担をして導入すべきか…

それぞれの医療機関で適切な判断をしてほしいわね。

電子カルテの留意点

電子カルテには導入にあたって、いくつか留意しておく点があります。

【電子保存の三原則】

電子カルテはいかなるメーカーから提供されているものであっても、
厚生労働省が定めた「電子保存の三原則」を満たしている必要があります。
くわしくは以下の通りです。

▼保存性
患者の詳細など記録された情報が法令で定められた期間に渡って真正性を保ち、
確認できる状態で保存されること

▼真正性
医療機関のスタッフなど正当な人が記録し確認された情報に関して、
第三者が見ても記録の責任所在が明確であり、
故意または過失による虚偽入力、書き換え、消去および混同が防止されていること

▼見読性
権限保有者からの要求に基づき、
電子媒体に保存された内容を必要に応じて閲覧できる状態にできること

【電子カルテ導入の補助金・助成金】

先述のとおり、電子カルテの運用には多くのコストが必要です。
金銭的な負担を考えて、なかなか導入に踏み切れない医療機関も少なくないと思いますが、
電子カルテの導入には「IT導入補助金」などの助成金が活用できます。

電子カルテの導入を検討している方は、
補助金や助成金を使用して負担を少なくしたうえで導入しましょう。

詳しくは、令和5年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業のサイトにて詳細をご確認ください。

https://it-shien.smrj.go.jp/about/

※2024年4月現在

電子カルテでより正確で質の高いサービスを

電子カルテのメリットやデメリットについて説明してきました。コストや習得にかかる時間など負担になる点はあるものの、さまざまな業務の効率化や人為的なミスの抑制、情報の迅速な共有など医療機関側はもちろん、患者にとっても大きな利益となるシステムです。

データの期限を区切って紙カルテのスムーズな電子化を図る、システム操作の習得にあたり勉強の場を設けるなど、電子カルテを快適に利用できるよう事前にルールを決めてうまく運用さえできれば、サービスの質の向上、ひいては病院に対する満足度の向上も期待できるのではないでしょうか。

カルテを記載する目的や書き方などをおさらいしたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。

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