「接遇」は一般的なサービス業に求められるスキルですが、医療現場においても非常に大切なスキルです。医療現場での接遇は「医療接遇」と呼ばれていますが、特に窓口業務を行う医療従事者にとっては必要不可欠なスキルといえます。そこで今回は医療事務など、患者と直接関わる医療従事者がマスターすべき医療接遇を解説します。
目次
医療接遇とは
前述のとおり、医療現場における接遇を「医療接遇」といいます。医療接遇は一般的なサービス業や接客業の接客マナーにあたるものですが、“医療”という特別な現場であるため医療現場に適した接遇が必要となるのです。
医療事務に求められる医療接遇
一般的なサービス業や接客業において求められる接遇と医療現場で求められる接遇には違いがあります。一般的な接遇は主に“見た目”や“立ち振る舞い”、“言葉遣い”に重きを置くことが多いですが、医療接遇においては一般的な接遇スキルに加え、患者やその親族、家族の“心に寄り添う”ことが重要になってきます。
医療機関の窓口業務は病院の“顔”ともいえるから「この人にもっと話をしたい」「もっと話を聞いてほしい」って感情を患者さんに持ってもらうことが大切なの。
そうやって私たち医療事務が患者さんやご家族の心に寄り添うことで“窓口業務によるトラブルの防止”にも繋がるから、医療接遇はとっても重要だってことを覚えておいてね。
基本は接遇マナー5原則!
接遇は一般的に「表情」「挨拶」「身だしなみ」「話し方」「態度」の5原則によって構成されています。医療機関に従事する方たちも、この接遇マナー5原則に基づいた医療接遇を身につけるとよいでしょう。
①表情
基本的には優しい笑顔で接することが大切ですが、時には笑顔が適さない場面もあります。相手の心情をよく観察し、患者の不安を取り除くような心に寄り添える表情も身に付けられるようにしましょう。
②挨拶
不安や緊張を抱えて来院する患者に威圧感を与えないよう、患者から見て気持ちの良い挨拶ができなければなりません。来院した患者が初めに訪れる受付での挨拶は、病院そのもののイメージを左右することもあるので非常に重要といえます。
③身だしなみ
相手を不快な気持ちにさせない“清潔感”が大切であることはもとより、医療安全に繋がるようなリスク管理がきちんと行えていることが重要です。安全で且つ清潔、機能的であることの重要性をしっかりと理解した上で身だしなみを整えましょう
④話し方
正しい敬語の使い分けはもちろんのこと、相手の状態を把握した上で節度を保つ言葉遣いを用いることが大切です。最近は正しい敬語や言葉遣いが身に付いていない人も多く見受けられるので、自信がない場合はしっかりと学んでおきましょう。
また丁寧にゆっくりはっきりと話すことも大切です。丁寧な口調で話していても話すスピードが速すぎたり声のボリュームが小さすぎたりすると患者が大事な部分を聞き逃したり、大切なことが伝わらなかったりするので注意が必要です。話し方によって患者とのコミュニケーションが上手くいかないとトラブルになりやすいので気をつけましょう。
⑤態度
どんな患者にでも横柄な態度をとってはいけません。患者は不安を持って来院することが多いので「目配り」「気配り」「心配り」を大切にし、態度で不安を煽らないように注意しましょう。また高齢の方には尊厳を損なわないような態度や口調を心がけることが大切です。
ついやりがち!やめたほうが良い患者対応
無意識に出てくる口癖などはなかなか直らないもの。自分ではやっていないつもりでも、気付かないうちにやってしまっているかもしれません。
口調に気をつける
前述の接遇5原則にもありましたが、相手に対して失礼にあたる口調は使ってはいけません。「ですから〜」や「だから〜」などの口癖は患者の気を悪くする恐れがあるので要注意です。
電話で「もしもし」はNGです
これは社会人として当たり前のこと。予め「お待たせいたしました」「お電話かわりました」など電話の決まり文句を覚えておくとよいでしょう。ついやってしまいがちな場合は慣れるまで電話のまわりにカンニング用のメモを貼るなどして回避しましょう。
忙しくても横柄な態度はとらない
こちらも接遇にありましたが、意外とありがちな注意ポイントです。月末月初のレセプト請求でいくら忙しくなっても、患者には一定の対応をしなくてはなりません。例え横柄な態度をとったことで患者の気を悪くしトラブルに繋がったとしても、“レセプト請求で忙しかったから”は通用しません。
いるのよねぇ〜。知らず知らずのうちにとんでもない対応になっちゃってる子。
電話で「もしもし」やっちゃってました・・・。き、気をつけます!!
接遇力を磨くには
接遇力を磨くには先述した最低限の接遇マナー5原則のほか「傾聴力」「洞察力」「質問力」などを身につけるとよいでしょう。医療事務としてスキルアップするためにも意識して自身の能力を磨いていくことをお勧めします。
傾聴力
患者は皆、何らかの症状や不安を抱えて来院します。その不安を取り除くために医療従事者に求められるのは、患者が話しやすい雰囲気を作り、相手の立場に立って話を丁寧に聞く傾聴力です。傾聴力はどんな現場においてもコミュニケーションを円滑にするために必要な能力といえます。
洞察力
言葉の裏にある本当の想いや目に見えない部分を見抜く力を洞察力といいます。患者は何らかの症状や不安を持って訪れるので上手く話せないことも多々あります。そのため、患者の顔色や細かな動作を観察して心理状態を的確に察知する洞察力を身につけることで未然にトラブルを回避したり、患者と良好な関係を築いたりすることができるようになります。
質問力
会話の中でもっと知りたい事柄や不明瞭な事柄を、こちらからの質問という形で相手から引き出す力が身に付くと、患者とのやり取りがスムーズになります。患者の“話を聞く”だけでなく、こちらから“話を掘り下げる”ことも時には必要なのです。ただし、患者が他人に踏み入れてほしくない部分にまで踏み込まないように注意しましょう。
自分自身の接遇をもう一度見直してみよう
実は医療事務を務めながらも医療接遇ができていない人が多いのが最近の医療現場の現状です。しかし、医療接遇を一からしっかりと教えてくれるような病院やクリニックはほとんどないので、自分自身で学び、日頃の実務で身に付けていく事が大切です。医療接遇をマスターしていれば、ブラック患者やモンスターペイシェントが来院しても対応しやすくなるでしょう。また医療従事者としての今後のキャリアアップにも絶対に役立つので、医療接遇はマスターすることをお勧めします。
患者さんやご家族の“心に寄り添う”って、簡単なようで難しいことですよね。