「医療事務」といえば窓口にじっと座っているようなイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、医療事務の仕事は開院準備から患者対応、書類管理など多岐にわたります。これから医療事務に挑戦する方や医療事務をはじめたばかりの方であれば、どのような仕事を担うことになるのか事前に知っておきたいはず。そこで今回の記事では、医療事務の仕事の基本を“1日の流れ”に沿って紹介していきます。
目次
医療事務の主な業務
1)窓口・受付業務
2)会計業務
3)レセプト業務
4)クラーク業務
1)窓口・受付業務
病院やクリニックなどの医療機関のカウンターで、外来の患者の応対をします。具体的には保険証を預かり、診察券やカルテを作成し、患者を診察へ案内するなどの業務を行います。また受付業務は会計業務を伴うこともあります。医療事務は患者が病院やクリニックで最初に接する人であるため、病院の顔ともいえるでしょう。ほとんどの場合、医療事務として入職した際に最初に配属されるのが受付部門です。
2)会計業務
診療が終了した患者から診療費用を受け取る業務です。カルテから診察の内容や検査の種類、レントゲンやCT、MRIなどの画像、薬の量などをコンピュータに入力して点数化します(診療報酬点数)。その後、患者が加入している医療保険から、患者が自己負担する金額を計算して請求します
3)レセプト業務
医療費の内容を明確に記した「診療報酬明細書(レセプト)」の作成と、健康保険組合などへ保険診療における医療費の請求を行います。現在は日々の会計業務でコンピュータに入力しているため、レセプト業務は月末や月初めに簡単な作業で請求書が作成できるようになっていますが、間違いがないかをチェックしなければならず、医療事務の専門性が発揮される業務です。医療事務の日常的な業務は受付と会計。レセプト業務は、最近は月末など締める日に集中して行っています。
4)クラーク業務
入院ベッドがあるクリニックは「外来クラーク」と「病棟クラーク(※)」に分かれます。外来クラークは受付業務のほか、カルテやレントゲン、検査データの準備を行うため、医師や看護師を補佐する業務ともいえるでしょう。病棟クラークは、病棟にあるナースステーションで働き、入退院に必要な書類のやり取りや費用の説明、施設の利用案内を行います。入院に対して不安になっている患者や家族からの質問を受けることも多く、幅広い知識が必要な業務です。
※入院ベッドがあるクリニック
医療事務のお仕事~1日の流れ~
日によってイレギュラーの仕事が発生することもありますが、医療事務の仕事には目安となる“基本的な流れ”があります。大きな病院とクリニック、どちらに勤めるかによって少々流れが違ってくることもあるので、今回は大きな病院とクリニック両方の仕事の流れを具体的に紹介していきます。
▼大きな病院の場合
7:30【出勤・開院準備】 初めての患者さんや紹介状を持った方は午前中に対応することが多く、開院から午後までの時間帯は大変混雑します。そのため大きな病院の場合はほとんどが予約診療です。 また大きな病院はクリニックに比べて1日に来院する患者が多い傾向にあります。患者は待ち時間を考え早めに来院するため、医療事務も早めに出勤することがほとんどです。出勤後は制服に着替えて待合室や受付周りの清掃を行い、前日に用意しておいた予約患者のカルテをチェックしたら連絡事項などを確認する朝礼に参加します。 | 8:00【午前診療の受付開始】 順番に患者の受付を開始。月初め、また初診の患者の場合は保険証の確認を行います。初診の患者には問診票の記入をしてもらい、カルテを作成します。 受付業務のほか会計業務も医療事務の仕事ですが、大きな病院の場合は受付と会計業務が分かれていることが多く、日によって受付や会計業務を担当したりします。会計業務を担当した場合は各診療科で診察を終えた患者の電子カルテが回ってくるので、その内容に基づき会計金額を算出し、投薬がある場合は処方箋を作成します。患者から会計金額を頂戴する際、処方箋の説明なども行います。 | 11:00【午前診療の受付終了】 | 11:30【お昼休み】 大きな病院の場合はスタッフの人数が多いため、早番・遅番などのシフト制を設けているケースがほとんど。そのため早番で入った場合は、午前の受付が終了すれば時間通りお昼休みを取れます。 | 12:30【午後診療の受付開始】 午前診療の受付同様、順番に患者の受付を行います。大きな医療機関の場合、午後は手術や時間のかかる検査などを主に行うため専門外来として完全予約制にしている病院が多く、午前診療ほど忙しくなることはあまりありません。 | 15:00【午後診療の受付終了】 最後の患者の診察後、会計が終了したら受付業務は終了。受付まわりの片付けを行い、翌日の予約患者のカルテを準備したら待合室などの清掃を行います。月初めの場合は、受付業務終業後にレセプト業務を行うことも。レセプト作業がない場合は、一日の業務は終了です。 | 16:30【帰宅】 大きな病院での仕事は、毎日順番でシフトが組まれています。 【主な勤務形態例】 ・早番の場合は7時半~16時半 ・日勤の場合は8時半~17時半 ・遅番の場合は9時~18時 今回紹介したケースは早番を目安としているため、16時半に退勤します。 |
▼クリニックの場合
8:30【出勤】 診療開始時間は病院もクリニックもおおよそ8時半から9時前後に開始しますが、大きな病院に比べて、出勤時間はやや遅い場合が多い傾向にあります。※大きな病院は朝早くから来院する方が多く、受診問診票の記載のフォローや検査や一部の診療科の医師が診療時間を早めたりすることなどが理由で出勤時刻や開院準備が早まることが多いため。 出勤後、制服に着替えて玄関周りや待合室、診察室の清掃を行います。その後、受付ブース内や診察室内の準備、会計レジにおつりを用意するなど、診察や受付業務がスムーズに進むよう準備しておきます。 | 9:00【午前診療の受付開始】 順番に患者の対応をします。クリニックの場合、医療事務スタッフが少ないため窓口での患者対応のほか、会計や診察室内での診療補助、電話応対なども同時に行います。 | 12:00【午前診療の受付終了】 受付を終了しても診察中の患者や会計待ちの患者が残っている場合は、最後の患者が帰るまで業務を終えることはできません。最後の患者をお見送りしたら待合室の片付けをし、お昼休みとなります。 | 13:00【お昼休み】 | 14:00【午後診療の受付開始】 仕事内容は午前診療と同様。受付と会計、電話対応、診察補助などを行います。 | 18:00【午後診療の受付終了】 最後の患者の会計が終了したら会計確認を行い、待合室や玄関、診察室などの清掃をして業務終了。月初めの場合は、受付業務終了後にレセプト業務を行います。 | 18:30【帰宅】 |
そうね。
そのうえ、このほかにも医療機関ごとに個別のルールや規律、お仕事の流れがあったりもするの。
さらにここには書いていないイレギュラーのお仕事があったりもするから、あくまで目安として参考にしてね。
たしかに!
突然の業者対応や来客が発生することもありますもんね。
配達員さんや検査委託業者さん、MRや来客、アポなしの営業とか…。
患者さん以外にも医療機関にはさまざまな人が訪れるから、イレギュラーな業務はその都度対応の仕方を覚えていかなくちゃね。
医療事務は“医療機関の顔”!
未経験の方のなかには、医療事務の仕事は「ただ座っているだけで楽そう」「医療現場では目立ちにくい」というイメージを持っている方も少なくないでしょう。しかし、こうして基本的な流れを見るだけでも医療事務は仕事の幅が広く、覚えることが多いうえ対応力が求められる仕事だということが分かると思います。
また一見すると地味そうに見えても、実際には病院の印象を左右するほどに重要な役割を担っているという一面も。患者が病院やクリニックに入って最初に接するのも、診察や治療を追えて最後に接するのも受付や会計を担っている事務員です。
医療従事者にとっては毎日数十、数百と対応する患者のひとりでも、患者にとってはひと月に一度、もしかしたら数年に一度かもしれない大切な時間なので、最初の印象や最後に掛ける言葉の一つひとつが心に残ります。そんな瞬間に対峙する事務員はまさしく“医療事務の顔”といえるでしょう。
だからこそ、医療事務においては業務への対応力だけでなく、丁寧な接し方を養うことがとても重要になります。このように大変な点は少なからずありますが、医師や看護師などの同僚や患者などたくさんの方から感謝の気持ちを寄せられることも多く、頑張った分やりがいや喜びも大きい仕事です。
またライフスタイルに合わせた働き方が選びやすい、全国どこでも職場探しに困らない、自宅近くで働けるなど、やりがいだけでなく働きやすさを求められるという大きなメリットもあるので、少しでも興味がある…という方は、ぜひこの機会に挑戦してみてはいかがでしょうか。
こうして比べてみると、お仕事の流れって大きな病院とクリニックでけっこう違うものなんですね…!